【アルミやろうぜ】ないものをお客様と共に。車いす用陰圧ブース

アルミやろうぜ、第9回です。以前ご紹介したストレッチャー用のカバーに引き続き、今回も医療系の製品についてのお話です。

今回取り上げるのは、車いす用の陰圧ブースです。

社内でも初めて開発・製作を行った製品で、このようなものがあることさえ知らない状態からのスタートとなりました。では、一体どのような経緯で開発を行うことになったのでしょうか?

開発に至った経緯

一通のメール

開発のきっかけとなったのは、当社に届いた一通の問い合わせメールでした。

病院内で陰圧車いすを製作したのですが、そちらで製作をお願いすることは可能でしょうか?

このような内容のメールが今年の5月ごろに届きます。このメールを送ってくださったのは、横浜市立市民病院の職員の方です。

病院内で患者さんに車いすに乗ってもらい移動するとき、咳やくしゃみによる飛沫が周囲に飛散しないように、車いすごと周りを覆うカバーをなんと自作しておられたそう。

こちらが実際に製作されていたブースです。正面のビニール部分以外は透明パネルで囲われているしっかりとした仕様。足元部分には患者さんが乗り降りをしやすいように、車いすに元々ついている脚置きを取り外し、さらに低い位置に広めの脚置きのスペースがついています。ブース内部には手すりも取り付けられています。

天井部には飛沫が飛散しないように、フィルター付きの換気扇を設置して車椅子内の空気を循環させる(陰圧にする)仕組みです。

そして、カバーの骨組みとして使用されているのが、当社のアルフレームです。ホームセンターでアルフレームを見つけ、ご使用いただいていました。

製作者の方は、元々このような組み立てに慣れておられるようで、クオリティの高い出来栄えにとても驚きました。その上で当社に製作してほしいという依頼のメールが来た訳は、このブースを複数台製作する必要があるためです。

一筋縄ではいかない仕様

職員の方も物を製作するのが本業ではないため、同じものを複数台製作することは、時間もかかり、骨の折れる作業になってしまいます。そして、構造自体が複雑な点も複数台製作するハードルを上げていました。

通常アルフレームはジョイント部材を使用してフレーム同士を連結するため、直角での連結のみが可能で、直方体の形をしたものがほとんどです。しかしこのブースは前面に傾斜がある仕様。ジョイント部材での連結が不可能なため、フレーム自体を斜めに切断してその角度に合わせたパーツを製作し、連結・組み立てを行わなければいけません。

角度の調節が難しいため、社内で製作する際もメジャーではない組み立て方法です。

また、既製品の車椅子に合わせて取り付けるための細かな設計も、逆にその場合わせでうまく調整する技術も必要になってきます。

さらに飛沫を周りに飛散させないのがこの製品一番の目的。ブース内を陰圧にするための気密性や空気の流れについても考える必要がありました。

このため、職員の方からも「試作品は製作できたが複数台製作しようとすると技術力的に難しい」というご意見が。

自社でも製作を行ったことはなく、仕様も複雑なこの製品ですが、メールのやり取りや、実際に現地でお話をお伺いすると、強く感じたのはこのカバーが今の医療現場で必要とされている事、そしてそれを自力で作り上げてしまうほどの熱い思い。

その強い思いに応えたい…!ということで横浜市立市民病院の方々と共同で、車いす用陰圧ブースの開発が始まりました。

制作にあたって

今よりもさらにいいものを

0ベースで開発が始まるのではなく、実際に製作された製品に改良を施して行う今回の商品開発。今の試作機でも十分クオリティの高いものになっているのですが、ここからさらにいいものを作ろうと、様々な点で改良を加えました。

例えば、ブースのパネル部分の取り付け方法。試作機ではフレームの外側から、パネルとフレームに穴をあけてビスで止める取り付け方でした。もちろんこれでも問題はないのですが、フレーム自体に凸凹があるため、パネルとフレームの間にどうしても隙間が空いてしまいます。パネルの角もむき出しになるので、角をとるなどの加工を行わないとケガの危険があります。

その為、改善案としてパネルを挟み込むことが可能なフレームを使用しました。

A-6アルフレーム
A-6のフレーム。3mm厚のパネルを挟み込むことが可能
A-9アルフレーム
A-9のフレーム。こちらはパネルを二方向に挟み込める

16mmタイプのアルフレームには、フィックスタイプという、溝にパネルを挟み込むことができる仕様のフレームが数種類あります。今回はその中からA-6,A-9の二種類を使用しました。これで、フレームとパネルの隙間が少なくなりますし、パネルを溝の中に挟み込むので角が外に出ることもありません。何より、ビス止めのための穴加工が不要になるので、より簡単に組み立てることができます。

また、乗り降りが楽になるように取り付けられていた手すりの位置を、実際に車いすに座って検証しながらつかみやすい位置に変更。

足置き下のキャスターが乗り降り際動かないように、一定の荷重がかかるとロックされるタイプのキャスターを取り付けました。

このように組み立て面だけではなく使いやすさにも更にこだわった改良を行い、今年の7月に1台目の製作が無事完了!

初めてメールをいただいてから、実際に1台目が出来上がるまで約3か月ほど。もともと形があったものを改良て製作したということもありますが、かなり速いスピードで完成に持っていくことができました。

無事に製品も完成し、この仕様で複数台量産!とはいきません。もっと多くの人に快適に使ってもらえるように、次はサイズの違うタイプのカバーの製作が始まります。

多くの人に使っていただくために

車椅子は、使用用途・乗る方に合わせて多様な種類が発売されており、座席の幅(座幅)も様々です。先程完成させたブースに使った車椅子の座幅では、体格の大きな方が使うには少し窮屈なものでした。そこで、座幅の広い車いすにも対応するために、サイズ違いの2台目の製作に取り掛かることに。

基本的な構造は1台目と同じなのですが、今回はより車椅子に取り付けやすくなるように固定方法の変更などさらに改良を加えて、10月に2台目の製作が完了しました。

ところで表紙のシロクマは何…?

余談ですが、この記事の一番上にいたシロクマ二頭。実は製品名に関係しています。車いす用陰圧ブースと記事内では記載していますが、製品のコンセプトとして持っていた「安心できる車椅子を」というところから

あんしんいす」→「あんくま

という、なんともかわいらしい製品名がついています。シロクマのキャラクターもここの名前から誕生し、製品のチラシやロゴマークなどで活躍しています。

「あんくま」のロゴマークのシロクマ。
安心を抱いているようなイメージです

まだ見ぬ商品を形に

現在この製品は、試作と1台目ともに横浜市立市民病院で実際に使用されています。10月に製作が完了した座幅の広い2台目も、今後運用が予定されています。使用者の方からも、患者さんに乗り降りを行ってもらいやすいという声をいただいております。

まだ、世に知られていないものや、アイデアだけで製品になっていないものをお客様と一緒に開発していけることは、当社の大きな強みです。今後も少しでも人の役に立てるものを、一緒にいいものを作っていきたいですね!

こちらの製品の詳細な仕様は以下製品紹介ページでご紹介しております。ぜひご覧ください!

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